FC2ブログ

Latest Entries

全面改装中……

諸事情によりサイトを全面改装します。

今週中にはアップ予定。 

第一話、完結―。

第一話「アイ・ノウ・ユアー・ネイム」 ―B/part―

(※はじめて見に来て下さった方、前半部を読まれていない方はA-Part下↓、またはこちらから

3-D.

 それは一瞬のことで、記憶に焼きつく暇さえ無かったのだろう。
 はっと我に返る。 私は操縦桿のスイッチを押したまま、前方のモニターを見つめていた。 鉄の塊が圧壊する様、圧倒される煙の量、そして橙色の粒子が輝きを撒き散らしている。 GN粒子はとても奇麗で、打ち上げ花火を間近で眺めているみたいだ。

 研究所の倉庫から出撃したあと、北へ向かって飛び去るアヘッドを発見、背部にマウントされていたGNライフルを抜いてビームの発射スイッチを押した――そこまでの記憶が綺麗サッパリ抜け落ちていた。 …しかし、

「撃墜、した……?」

 まさかライフル一撃で落ちるなんて。 自分でもびっくりだ、戦闘シュミレ―タ―でもここまで上手くはいかなかった。
 有人機動兵器であるモビルスーツを撃墜する。 それが意味するものは明確にそこにあった。 均等である筈の命の重みを一つ、自らの手で消し去ったという事実。 私が今手にしている力の重みによって、さっきまで燃えていた「誰か」の生の炎を踏みつけたのだ。 

 だけど、それを実感することになるのは、まだ先のことだった――。

 ピーピーピーピーピー…

 警告音が鳴っているのも今気づき、まだ敵が三機残っていることを知らせている。内二機はGNドライヴを搭載した機体。 このまま見逃せば取り返しの付かないことになりかねない。
 レーダーを確認すると自機を示す青い点一つに、赤い点が三つ、そして連邦軍の正規MSを示す緑の点―GN-Xのものがあった。 

 「こちら…ええっと、ノーリッジ研究所から来た者です、GN-Xのパイロット、応答してください!」
 通信回線を開くが、ノイズが酷過ぎて何も聞こえない。
 「…もしもし、聞こえていますか? 応答ぐらい……なっ!」

 奪取した機体をこれ以上破壊されては敵わないとの判断か、三個の赤い点が反対方向に撤退していくのが見てとれる。 

 「逃げるな! どうしよう一体そうすれば…」

 このまま突っ込んで行っても、三機を同時に相手取る自身などはない。

 頼りのGN-Xにも動きがない。 ふと、違う種類の警報が鳴る。

 「…!? ああもう、今度は何!」

 赤く点滅する画面には[WARNING]の文字が煩く踊っていた。

 視認モニターに使用したライフルが映し出される。 銃口はぐにゃりとヒシャゲ、原形を留めていなかった。 一発の射撃だけでこんなになるなんて。 いや、そもそも高度のE-カーボン製の兵器がこんなに変形するなんてありえない。

 「一体どうなって…」

 とにかくこのライフルは使えない。 武装はもうビームサーベルしか残っていないが仕方ない。 あまりやりたくないが追いかけて接近戦でやり合うしかないだろう。 そう思った矢先、何やら不穏な物音が響いてきた。 
 
 背面のGNドライヴからプシュゥゥゥ…という音が漏れ、次には[EMPTY]と目の前に点滅表示される。

 「うそ、粒子切れ!?」
 
 
 GNコンデンサー内に残っていた僅かな粒子を、先ほどのライフルで使い切ってしまったらしい。 やばい、はやく―

 [おい、大丈夫か? …ピンクいモビルスーツのパイロット!]
 
 
 通信が回復し、その主である連邦軍のGN-Xがこちらに飛んで来た。 知らない男の声には不安の色が滲んでいる。  今まで何をしていたのだろうか、

 「しかしそのツインアイのツラ構え、『ガンダム』だよな!? 一体どこの所属で…」
 
 「そんなことより今まで何やってたんですか、アナタたちはっ!! 」 

 「! 女!?」

 失礼極まりない不抜けた発言が耳に飛び込んできた。

 こうしている間にもイナクトとアヘッドたちは遠ざかっていくのに。

「早くしないとGNドライヴが! すぐに追いかけて……きゃっ!?」

 体が重くなり、圧迫感が押し寄せてきた。GN粒子による管制制御を失ったラプンツェルが、頭部から急速に落下し始めたからだ。地肌に凄まじいGの圧力を感じる。さらにやばい。

「う…うわぁぁぁぁぁぁ―!!」

 落ちる、堕ちる、墜ちていく。 下はコルチェスターの突き刺さるような山々、さっきまでわたしがいた場所。
自分がどこを向いているのかさえ分からず、心臓が口から飛び出すのではと思うほど気持ち悪い。 しかし不運にも頭は冷めていて、ただ数秒後の明らかな結末を―最悪の結末を予期していた。

 地上落下まであと百メートルあるかないか。 視界が掠れていく中、[くそ!] とか [間に合え!!] といった聞き慣れない声が耳に入ってきていた。


 ≪―…ちゃん! …ちゃん!―≫



 薄れゆく意識で聞こえてきたのは、走馬灯じみた幼いころの記憶。



 ≪―バイバイ、…ちゃん。≫


 
 わたしを呼ぶ、誰かの声。 その声が、スピーカーから聞こえる男の声に変わったと思うと、そのまま意識を失った。





 4-D.
 目醒めてまず初めに目に映ったものは、俺を覗き込むメガネだった。 いや、眼鏡と言えるのか。 それで視力は確保できるのかと思うほど小さく四角い銀縁の伊達眼鏡。 無表情一徹。 青年と言えるくらい若い、中性的な容姿の男は、不快に感じるほど超近距離で顔を突き合わせていた。仰向けに寝る俺に馬乗りになる形だ。

「おや、お目覚めかい?」

 「……うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 俺はのけ反ってベッドの壁へ後退した。 まず始めに疑ったのは、この白衣メガネがゲイであるか否かだ。 軍には多いんだよな、こういう輩が。 …ん、軍?

 「ここは、どこだ?」

 俺の困惑を感じ取ったのだろう。 ベッドから降りた男は説明を始めた。

 「『ノーリッジ特殊技術研究所』 君が任務で着任する筈だった場所さ。 目的地には着けたわけだ、良かったね。 どこもケガはしていない、命あっての物種だ」

 ちなみにココはそのA棟にある医療室だよ、と男にしてはやけに高い声で続ける。

 「待て、なんで俺はベッドに寝ていた。 確かピンクのモビルスーツが粒子切れを起こして、落下していくのを止めようと…」

 「ああ、そうか。 まずはここに運ばれるまでのアラマシを話さなくてはね」

 そう言うと、男は淡々と俺が病棟に来るまでの経緯を話した。 

 あの時―、あそこにいたモビルスーツは『ラプンツェル』という、この男の研究所が開発したモノだということ。 俺が粒子切れを起こしたラプンツェルをすくい上げようとし、誤ってGN-Xもろとも地上に不時着させてしまったこと。 
 「そして我々が駆け付けた頃には、君も意識を失っていた。 いやぁ、ラプンツェルが破損しなかったのは本当に良かった、大いに感謝する。 だがGN-Xとラプンツェル、両方を研究所まで運ぶのには骨が折れたよ」

 「そうか…。 手間を取らせてすまなかったな。」

 そういえばコイツは誰だろう? 白衣を着ているからドクターなのだろうか。 俺の視線を読み取ったのか、男はああそうか。 まだ名乗っていなかったね。 と言い自己紹介を始めた。

 「私はクロム=ノート。 ノーリッジ特殊技術研究所の所長をやっている。 君は…失礼だが、GN-Xの登録データを見させてもらった。」

 
 初めまして、デュマール=アハト中尉。 そう男は言い、俺は手を差し伸べた。
 
 「よろしく、所長さん」
 
 「?」

 俺が差し出した手を不思議そうに見つめるクロム所長。 少なくともこの男には握手の習慣が無いらしい。 不自然な間のあと、ああ、そうか。 握手ね。 と手を伸ばし互いに握る。「ああそうか」が多い男だ。

 「ああ、そうそう。 隣のベッドに寝ているのがラプンツェルのパイロットだ。」

 男はそう言い、俺から見て右側を見た。

 この男と話していて気付かなかったが、この病室にはもう一人いたようだ。パイロットか…インカムの声からして女だったよな、と俺も右を向く。

 見ると、一メートル間隔向こうにもベッドが一つ、美しい端整な顔立ちの少女が一人、寝ていた。 藍みがかった白の、見事な長髪の少女だった。 

「おい、リーザ。 君もそろそろ起きたらどうだい?」

 男はもう片方のベッドに歩み寄ると、寝ている彼女の頬をぎゅむとつねった。 雪見大福のような肌に一点、桜色の斑点ができ上がる。 

 「んむぅ…。 あ、所長……おはようございます」

 間の抜けた発言をして覚醒した彼女は、あくびを押し殺しつつ髪を掻き上げた。 それを見ている俺に気付くと、少し動揺したようだ。 寝ぼけ眼のまま俺をぼうと見つめている。 声しか聞こえなかったが、「何やってたんですか!」と軍人相手に言うほど度胸がある女には見えない。

 「? 所長、この方は…部外者ですよね」

 「ああ。 先の戦闘でのGN-Xパイロット、デュマール=アハト中尉殿だ。 君とラプンツェルを救ってくれた。 感謝するといい」

 「あ、連邦の軍人さんですか。 …助けてくださって、ありがとうございました。」

 エリザベータ=ソーンツェフです、と名乗りペコリと一礼。 しかし顔を上げると一変、辛辣な目つきで睨んできた。 

 「だけど、GNドライヴを奪われたのは事実です。 軍人さんならソッチを優先事項にするべきでは?」

 前言撤回、かなり芯が強いと見える。

 「ソイツはごもっとも。 軍人の仕事は身内の機密保持ってのもある。 だがな、軍人の本分は民間人の命を護ることだ。」

 義務と使命、そこの所を混同しないでほしい、と俺も睨み返してやる。 批判を食らうのは結構だがされっ放しでは性に合わない。
 
 「そうですか、あなたは自分の使命を全うしたというわけですね。 だけど、どうなさるんですか? 連邦が独占しているはずのGNドライヴ搭載型の盗難。 そんなことが発覚すれば大問題ですよ、中尉」

 それくらいわたしでも分かります、と白い頬を膨らませる。 そう、これには言い逃れできない。 大失態だ。 …正直、軍法会議どころか本当に首が飛びそうなのだ。

 「それについては私が解説するとしよう」

 さっき少女に「所長」と呼ばれた男が会話に加わる。

 「本来、連邦のモビルスーツには機密保持・部外者による不正使用を防ぐために声紋認証システムが採用されている。 設定されたパイロット以外は使用できないようにね。 しかしその機能はあくまで正規に運用されている機体での話だ。 アヘッドシリーズは全バリエーション機を含め、既に連邦の公式コードが剥奪されている。」

 型式番号GNX-704T、アヘッド。 GN-Xシリーズ、引いては「ガンダム」を凌駕するMSの開発を念頭に置かれた最新鋭機であった。 旧人革連のMSティエレンの流れを汲み、その性能は五年前の「ガンダム」すら上回るとされた。 連邦直属の機関である独立治安維持部隊アロウズにのみ配備され、次世代の連邦量産機として様々なテストバリエーション機が産み出された。 

 新型のためアロウズ内でも中尉以上の階級を持つパイロットにしか与えられていない。 俺も搭乗し、小隊の親機として東南アジア地区へ派遣されていた。 だがそこで待っていたのは……

 「あ、だから敵・味方識別コードも敵機・UNKNOWNを示すレッドだったんですね」

 「そう。 だからどこの馬の骨とも分からない“敵さん”でも使えたってわけさ。」

  だがね、と続ける。
 「連邦製のGNドライヴはあの「ガンダム」とほぼ同等の性能を持つ。さらにこちらは量産が可能だという点で勝る。 しかし我々の物はあくまでコピーに過ぎん、搭載された燃料をGN粒子に変換するだけだ。 だから、使い続ければいつか燃料切れになる。 それに一度電源を切れば、もう一度“始動器”を動かさなければならない」

 そうなのだ。 GNドライヴは始動させるごとに“火入れ”を行わねばならず、それには専用の燃料補給装置が必要となってくる。 ああ、そうか。

 「だからドライヴ対応の“火入れ”を持たないやつらは、次に動かそうと思っても使えない、と?」

 「そういうことさ」

 「やつらも、始動器を積んだ輸送艇を破壊したのは誤算だったろうね」

 そのとき、爆散した輸送艇の光景が再び浮かび上がった。 目覚めてから、無意識で必死に抑えつけていた言葉が口を突く。

 「フィス……」

 「ん?」

 そう、俺は仲間を殺した。 あのときイナクトを追うのに執着するばかりに、部下全員を、かけがえのない同僚たちを失った。

 「俺の判断ミスだ。 みんな死んだってのに、護衛役の俺だけ生き残っちまうなんてな」

 滑稽だ、そう冗談めかして言ってみる。 項垂れても涙さえ出て来やがらない。

 「そんなことっ…!」

 離れたベッドから、エリザベータが体ごと乗り出してくる。 なにか言おうとするのが分かったが、言葉を塞ぐ。 俯くのが気配で分かる。

 「……そんなこと、言わないでくださいよ」

 暫しの沈黙の後、彼女が絞り出したのはか弱い責めだった。

 「だがね、中尉」

 所長を見上げると、何やら意地の悪い目微笑していた。

 「君のお友達、生きているかもしれない。 いや、その可能性が高いよ。」

 「なっ…」

 目の前の男は口を釣り上げている。 可笑しくてというよりも。 それは悪気の無い、子供が浮かべる純真無垢な笑みのようだった。




―C/part―

1-M

 どこまでも続く広大な針葉樹林の森は深い。 木々の間には言い知れぬ闇が縫い、その深淵は身を隠すのにうってつけだった。 都会のビル群さえ埋まってしまいそうに高い自然のトンネルは、モビルスーツなど容易く覆い隠せてしまう。

 少し開けた場所には、大勢の者たちがひしめき合っていた。 多少日の光が入るとはいえ、顔の輪郭を浮き上がらせる程度でまだ暗い。

 「―はい、そうですか。 ノーヘッドが4機……十分です。 御苦労さまでした、ではいつものルートで合流を―」
 暗がりの一角で、スーツ姿の女性が携帯電話で話している。 周りに口を開く者はなく、アルトの声が一層はっきりと聞き取れた。

 「ええ、こちらは問題ありません。 一人のかけがえの無い同志を失いましたが……アヘッド二機を収穫済みです。

 仲間数名とも落ち合えましたし、準備は万全です」

 ふと、その女性が何かに気を取られた。 誰かが後ろからスカートの裾を引っ張っているようだ。

 「…キャッチが入りましたのでこれで。 では」

 電源を切ると、今までの事務的な声より少し和らいだ口調で話し始める。

 「だめでしょう、マーシュ。 人の電話中に注意を逸らしたりしてはいけません」

 それは弟をたしなめる姉のようだった。


 「だってクロエ、アステラスが君のことを呼んでいるんだよ。 彼の言うことには従わなくちゃ」
 
 声はこの場には不釣り合いな、変声期の少年のものだった。

 「ああ、そうね。 分かったわ、声明の準備もあるから、後で顔を出すと伝えて頂戴」

 「了解したよ、クロエ」

 数分後、少年の姿をした影が一人、暗い森を歩いていた。
 
 日は落ちかかり、夕焼けのブラインドが森中に掛り始めていた。
 
不意に、少年は茜色に染まる空を見上げた。

 木々の間の虚空を見つめ、口を開く。

 「ふふ、まさかもう革新の片鱗を見せるとはね。 シンシア、懐かしい。 君を真の名で呼べる日がやっと来たんだ」

その口元は、無垢な子供そのものだった。

 (第一話、完)




一話に役半年とかww
ここまで読んでくださった方あなた、お付き合い頂きありがとうございます(泣き)

来週はサービスシーン満載のシャワーシーンを入れる予定です(マテ)

あと文字だけでさびしいので、キャラ・モビルスーツの絵をくださると嬉しいです。

コメント……あ、あと改訂しました↓

 只今、最初から今までの文を改訂し終わりました。 リーザ(主人公?)の出撃シーンとか。 時間つぶしにでも読み返してみてください。
 今、続きを書いております。
 
 …私事ですが、今日人生で初めてのTOEICを受験してきたところです。
いや―…リーディングの単語が分からない分からない。学生証を忘れてプチパニックに陥りました。
まあ、これで一段落着いたのでまた書いていきます。

 毎日数人の方が見に来てくださって、かなり嬉しいです。
できればコメントくださればもっと嬉しい…というか執筆意欲が増す気がします。
だから……ね?(←ナンダコレハ) 

 …まあ、 お暇な時にでもコメント書いて下さると感無量です。

 ではでは。

続きを読む

第一話「アイ・ノウ・ユアー・ネイム」 再改定版3

■プロローグ
鼻先をそよ風がくすぐった

わたしの目をぎゅっと瞑らせ、頬を撫で、髪をやさしく梳かして、通り過ぎる

髪を掻き上げ瞳を開けると、さっきまで見ていた景色―

俯けば、吸い込まれそうなほど深い谷と、雲下(うんか)で苔をついばむ羊たち

春の濃厚な草の臭いと、未だ溶けない積雪の間寂さが混在している

前を向けば、どこまでも広がるすそ野と青い空 

緑と氷の閑寂な世界

全てが始まった日、

私はコルチェスターの頂にいた


―A/partー

1.―S.

「問1.我が研究所に“あの”MS(モビルスーツ)を操縦可能なパイロットは何名いる?」
「…一名のみです、所長」
「では問2.その『一名』とは誰か?」
「…わたくし、エリザベータ=ソーンツェフです、所長」
「さらに問3.今日は何の日だ?」
「連邦軍からの研究支援物資が届く日です。……主に疑似太陽炉搭載型MS数機を受領します」
「最後の質問。明日は、何の日だ?」
「……我らが研究所の開発したMS『ラプンツェル』の記念すべき起動実験です…とても大事な日であります、所長」
刹那、
「痛っ!!?」

頭を鈍痛が襲い、リーザは冷たい鉄の床にうずくまった。目の裏に星が散っている 頭をスパナらしきものでブン殴られたからだ 
「普通、人はひと思いに他人の頭を鉄の塊では叩かない。つまりわたしを叩いた相手は人ではないか、人殺しか、もしくはクレイジーな奴かだ」
「おい! 地の文が台詞(セリフ)になっているぞ! 所長の私をクレイジー呼ばわりかっ!?」
そう口角泡を飛ばしながらまくし立てているのは、当研究所の所長である。
「いえ、もしくは一番目と二番目もかと」
「え、俺って人じゃないの!?てか俺はまだ貴様を殺していない!」
リーザが側頭部をさすっていると、所長は下手なノリ突っ込みをスパナ片手に演じていた。

先程まで、彼女は研究所から数キロほど離れた山の頂に一人で登り、それが発覚し所長に絞られていた。全所員にかこまれて。
ここ、ノーリッジ特殊技術研究所。その一角にあるMS第一格納庫には、研究所としては極々小規模な所員総勢15名が詰めかけていた。
無論、独断行動をしていたリーザを叱るためである 

その中のひとり、もう六十も後半の整備長が助け船を出してくれた
「なぁクロム所長。もう、そこら辺で許してやったらどうだ な、リーザももう懲りただろうし 何も悪気があってやったわけじゃあないんだ」
やせ細った背の低い作業着も、今はとても頼りに見える

「だがなぁ、お前さんも悪いぞ、リーザよ」
げ、今度はこっちか。老人は若人を叱るのが責務なんだろうか。だとしたらそれは要らない義務感だ。そうリーザは悪態をついていると、
「生憎、お前さんの代わりは誰も勤まらんのだ。あの鉄人形を操れるのはアンタだけだからな。」そう言って背後にそびえ立つ巨大な「鉄人形」をあごでしゃくる。

格納庫の天井すれすれの高さのそれは、モビルスーツと呼ばれる巨大有人「兵器」。数世紀前まで使われていた戦車や航空機に取って換わり、今や世界中で、あらゆる場所で使われる人々の戦いの足であり、手である。
「だけどこれ、なんでこの機体色なんですか?」リーザは自分が乗ることになる機体を見上げ、嘆息する。
MSの装甲は『E-カーボン』と呼ばれる物質で形成されている。これは金属に似た性質があり、車と同じく空気劣化しないよう塗装を施すものだ。この「ラプンツェル」も例外ではない。
だけど、いくらなんでもこれは……!
「いくらなんでもピンクはありえないですって!」
そう。この機体はあろうことか、全身真っピンクなのである。

この研究所は所長であるクロムが立ち上げた。以前連邦軍内の研究施設に籍を置いていた彼は、軍内との繋がりを今でも広く持っている。その突き抜けて風変わりな性格を面白がり、軍上層部の者が出資協力した、などという噂まである。 研究所の権限はクロムが全てを持ち、それは機体塗装にまで及んでいた。『ラプンツェル』のカラーも周りの反対を押し切っての独断で塗装させたのである。

「これ、100%所長の趣味じゃないですか!」
クロムはむっくりと起き上がった。
「ふ、ふはっ!ふはははははは!!」ぞくぞくと悪寒が全身を駆け巡り、リーザは背後を振り返る。クロムは不敵に も高らかに嗤っていた。
「リーザよ!君の眼は節穴なのかね?よーく見てみろ!『ラプンツェル』の機体色はピンクではない!!」
なっ、
「な、……なんだって―!」リーザを始め、所員総勢14名(所長を除く)が、一斉に叫んでいた。
再び私は『ラプンツェル』を見る。…やっぱり、
「…ピンク、ですね。」
所長は「はっ!」と私の再認を鼻で笑う。
「違う、この色はピンクなどという下劣な配色ではない! 」
腕を振り上げ、クロム=ノート所長(妙齢)は高らかに賜わった。
「サクラ色と呼びたまえ!!」
「………」
笑えない。引っ張っておいてこれか。
格納庫全体をを沈黙が支配している。集団内においてそのリーダー格が滑るとフォローしずらいものだ。目上の者に 対しての反論はし難いものである。文字通り、何ともいえない空気が充満した。

「……というかリーザ」
沈黙を放った張本人が話題を変える。さすがに空気を読んだようだ。
「なぜ今日に限って登山などしようと思ったんだ。 別に君の趣味をとやかく言うつもりはない。だが、どうしてこの大事な時期に」
「それは…」
どうしてだろう、とリーザは思案する。確かに山を登るのが好きだというのもあるが、今日はもう一つ理由があったのだ。
「…予感です」
「予感?」
「はい。なんだか、自分の内で…“何かが進む気”がするんです。上手くは、言えませんけど…」
自分は何を言っているのだろう。今日はテストパイロットである自分に事故が起こってはならない。そのために外出禁止令を出されていた。しかしそれを犯してまで、山からの景色がどうしても見たくなったのだ。それは願望というよりも使命に近い感情だった。
自分の言葉が足りていないだけなのか、それとも……。

「ま、いいさ」
そう言うと所長は膝をつき、彼女の頭をぽんと撫でた。
「怪我をしていなくて何よりだ」
クロムは起き上がると、格納庫の所員に向かって声を張り上げた。
「さ、連邦軍からのお客さんが来る!出迎えの用意だ!!」
+
ウォォォォォォォォオウン!!!
警報。

研究所中に警報音が鳴り響く。格納庫にもそれは伝わり、所員たちに不安と緊張が伝播する。
MS等の軍事技術を扱う研究所は、民間でも敵襲用の警報装置の設置が義務付けられている。連邦に正規登録されたも の、もしくは自主開発以外のMSが近付くと、自動的に作動する仕様だ。
慌ただしい中、整備士の青年はつぶやいた。
「サイレンが鳴ってるってことは、これ、予定してた連邦軍じゃなよな…」
それはすなわち、危険が迫っていることと同義だった。

しかしその時、誰も聞いてはいなかった。
「……来たか。」
警告音(アラート)に紛れ、
クロムがそう口にしたのを。


1-D,
鼻風邪を引いたのだろうか。さっきからくしゃみが止まらない。
そういえば日本の友人から面白い迷信を聞いたことがある。くしゃみをするのは誰かが自分のことを噂しているから、だそうだ。さらにその回数でその噂が良いものなのか、悪いものなのかさえ分かってしまうらしい。それが本当だとしたらすごい。俺がさっきから放ったくしゃみは数知れず。一体誰がどんな噂をしているのやら。

そんなことを考えながら、デュマール=アハト中尉はMSの操縦を続けていた。
イギリスの遥か上空に大小二つの影が浮かんでいた。MS一機と、細い筒状をした連邦の輸送艇。

彼が駆るのは『GN-XⅢ』、連邦軍の主力MSである。
この機体には『GNドライヴ』と呼ばれるエンジンが採用されている。ドライヴ内で燃料を『GN粒子』という橙色の粒子へと変換、その粒子が稼働を始め機体制御・重力制御・火器管制など、MSを運用するために必要な全てのエネルギーとなる。
しかし。今となっては一般化されつつあるこのエンジンも、元を辿ればテロ組織が使用していた物のコピーだ。
「そう考えると、なんだか気持ち悪りぃよなぁ」

[なんだデュマ、酔いでもしたのかよ。] 
そう言ったのは、同期で通信兵のフィスである。エースパイロットの名が泣くぜ、とお決まりの冷やかし文句を通信してくる。
「お前……いくら上官が俺しかいないからって、通信を軽口叩くだけに使ってんじゃねえよ!」
「いいじゃんよぉ。いくら特殊任務ったって、MS数機の輸送だぜ?しかもイギリスの片田舎にある連邦の一請け負い会社。治安も安定してるし、楽勝だ」
あと10分位で到着だしな、と声に笑いを含ませて言う。
楽観主義者め、とモニター越しの友に毒づく。

今彼らは、ノーリッジ技術研究所という施設へMSを輸送する任務を帯びていた。旧式であるところの『ティエレン』や『イナクト』の連邦施設間の運輸任務はよくあることだ。しかし、

「しかしだ。 フィス、いくらなんでもGNドライヴ搭載型の輸送は別だ。新兵装開発だか何だか知らないが、正式な連邦軍の工場でもない私設の研究所にふつう、最重要軍事技術を運ぶか? それも護衛は俺のGN-X一機だけ」
 現在、GNドライヴの技術は地球連邦軍の独占だ。 量産可能だといっても軍には予算がある。連邦でも中心を担う部隊にしか配備されない。

 「まぁ、確かにそうだよな…。お前がいくら元“あの部隊”の精鋭さんつっても、一人じゃ警戒しなさ過ぎではあるよな……」
 スピーカー越しに聞こえるフィスの声にも不安の色が滲んできた。
 たしかにアハトにはMS操縦の実力がある。 旧式のMSで組まれた小隊程度なら一人で相手取れる自身があった。 今なお各地で燻っている反連邦勢力の残党は旧式の機体しか使っていない。自分の駆るGN-Xとイナクト等の機体性能の差もあるだろう。

 「それに、ここはAEU領のど真ん中だ。 反勢力の拠点があるわけでもない。 だが逆に考えれば危険だろう。 中東みたいに通信遮断目的のGN粒子散布装置があるわけじゃないんだ。 俺らの運んでいる『機体』が何か、連中に知られでもしたら……」

 ピーピーピーピーピー!!!
 「!!?」

 敵  

 備え付けのレーダーを凝視する。 小型モニターに熱源を示す赤い点が踊る。
 [ユイット1、こちら輸送艇。MSの反応を確認した]
 女性オペレーターの声。機影は3。

 「こちらユイット1、モニターに反応有り。しかし機影が見当たらない!フィス、どうなってる!?」

 ピーピーピーピーピー!…

 アラートは鳴りっぱなしだ。 しかし在るはずのMSの姿が視えない。
 この場合には二つ理由がある。ただのセンサー誤作動か、あるいは―
 [熱源ライブラリー照合。機体はイナクトと断定。本地点の陸地より急速に接近中!!]
 ―あるいは、高度の違い―!


 2-S. OSの起動スイッチを押す。 一つ、二つ、三つ。 暗く狭いコクピットにモニターの明かりが灯っていく。
 [おい、リーザ! エリザベータ=ソーンツェフ! 今すぐそこから降りてこい、危険だ!!]
 集音装置から所長の声が拾い上げられる。 分かっている。  あの人は私の身を案じているわけじゃない。
 大丈夫です! 対MS戦のシュミレーションも経験しました。ラプンツェルは無傷でお返ししますよっ!!」
 [まだ要の “ラプンツェルシステム”を搭載してないんだぞ! ]
 「敵は反連邦のイナクトなんでしょう。 GNドライヴ搭載型なら必ず勝てます。 それに起動実験なら、今日も明日も変わらないでしょう!?」
 ゲートを開けて! 回線越しに怒鳴り散らすと、所長の小言を倉庫入り口の開閉音が掻き消してくれた。 さぁ、これからが、
「エリザベータ=ソーンチェフ、ラプンツェル! 出ます!!」
これからが、始まりだ。


 3-D,
 「くそ、輸送艇の腹を狙う気かよ!」
 敵は自分の真下。下方からの射撃が狙いだろう。
 アハトは操縦桿を握り締め、フッ、と軽く息を吐く。

 「!!!」 垂直な急下降で脳が揺さ振られ、空気が歪む。  ゆれる視界の中、彼は青い機影を捉えた。
 イナクト・カタロン仕様。 可変機構を搭載した旧AEUの主力MS。 一昔の戦闘機のようなフォルムへ変形できるそれは、今は細長い人型MSの形を成していた。
 操縦桿を握る手に力が入る。

 瞬間、二組が交わった。銀白の流れ星と、蒼き閃光が三つ。
 その時、アハトは“敵”を視認した。 隊列は組んでいない。 バラバラに各自で行動しているに過ぎないようだ。スリーマンセルは小隊で最もよく用いられる。 しかし隊列を組みもせず無暗に行動することは、それだけで敗北の要因と成り得る。
 それが分かっているから、彼は直感で感じ取った。
 勝てる。
 機体から見て反連邦勢力『カタロン』の残党だろう。統率性から見ても、おそらくは寄せ集めで編成された雑魚の集まり。

 二組が交わっている間、アハトは既に旋回行動を取っていた。交わってすぐGN-Xが青い機影たちを追う。
両者の差は数。しかし
 「数が多くたってなぁ!」
 すぐにGN―Xのビームランスが青い一機を捉えた。
 「意味なんか無いんだよ!!」
 操縦桿のスイッチを、押す。迸るオレンジの閃光。
 それとほぼ同時に爆散し崩壊するイナクト。

「残り……2機!」
 息が荒くなる。 苦しい呼吸を整える隙もなく操縦桿を握り直す。
 ほぼ垂直の急旋回などこの機体は想定されていない。 重力制御をも果たすGN粒子さえ想定外の機動によるGはカバーしきれない。
 苦しい。 彼の身体が悲鳴を上げる。 しかしアハトの口元は笑ってさえいた。 脳隋に刻まれる感情はただ一つ。
 悦びしかなかった。
 それが油断と同義なのだと気づかずに。

 レバーを倒し。 クロムは散開する二つの内一体を捉え、操縦桿のスイッチを押した。
 GNランスの射撃性能には敵うわけもなく、逃げも空しく被弾する。
 「残り―」
 [熱源を更に確認! 数1、距離200、―くそ、奴ら熱源を遮断してやがった!]
「なにっ!?」
スピーカーとコクピット、両者の空気が張り詰める。

 輸送艇を挟んだ、GN-Xと正反対の方角からだった。 同じ青いイナクトが一体。 しかしそれは戦闘機の形態―飛行フォルムのまま向かってくる――

 否、まっしぐらにコンテナへと突っ込んできた。
 「っな…」
 『!?』だけが頭の中を埋め尽くす。 凶器の沙汰としか思えない。 下手を打てば、いや、ほぼ確実に爆散していただろう。
 だがイナクトは無事だった。機体の先端を輸送艇へ垂直に刺したまま体制を保っている。

 イナクトの上部コクピットから数人が乗り出し、突撃してできた穴からコンテナ内部へと侵入していくのが見えた。
 「あいつら無茶苦茶だ!」
 操縦桿を壊れんばかりに握り閉める。
 ふざけている、これでは無暗に手出しできない。

 「フィス、奴ら直接そっちに乗り込んだぞ!白兵戦になる、いますぐ俺も―」
 ピーピーピーピーピー!
 アラート。 さっき取り逃がした一機が向かってきた。
「 うざってぇ!」
 すぐさま最後の一機を捕捉し、目標へ向けてスイッチを押す。

―!
 「くそがっ、当たれよ!!」
 このイナクトやけに反能がいい。いくらロックオンしようが、ことごとくこちらの標準を外してくる。
 それは焦りに繋がった。
 [デュマまずい、機体が……]
 「!?」
 [機体が― 『アヘッド』が奪取される!!]
 「っな…!?」

 ピーピーピーピーピー!
 コンテナの方を見ると、さっき開けた穴から真紅のモビルスーツ3機が飛び出してくる。
 イナクトがそれに示し合わせたようにに離脱していく。
 一機逃がした。だがそんなことはどうだってもいい。
 問題は

「まさか…」
 アハトは茫然とモニターに映る『アヘッド』の後姿を見た。 血に染まったような赤い機体。 GN-Xより一回り上の大きさと性能を誇るGNドライヴ搭載型。 アハトも乗っていた、今となっては連邦の“タブー”と称される機体。
 半年ぶりに動くその姿を、亡霊が浮遊しているかのように見つめていた。
 アヘッドたちは背を向けて逃げていくのが見える。

 「くそっ、逃がしゃしねぇ―」
 [大丈夫か。中尉、い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「!?!?!?!?!?!?!? 

 鼓膜を突き破る爆音!!
 モニターに映るは果てのない爆炎の暴力。
 フィスたちの乗るコンテナは、跡形もなく消え去った。

 「あ、 ぁ、……」 
 アハトの思考も視界も、真っ白に塗り替えられていく。
 さっき乗り込んだ奴らが離脱する際、コンテナ内に爆弾を仕込んでいたようだ。 だがそれさえも理解できないまま、彼は操縦桿から手を離していた。
 フィス。楽観主義者でお調子者の、戦友であり、親友であり、同期の部下で……
 「フィス。」
 名前を呼んでも虚しい。それにフィスだけではない、
 「みんな…」死んだ。
 輸送艇に乗っていた、フィスも含めた5名の部下―仲間たち。
 その命が、一瞬で散った。
 両手をだらりと下げ、
 モニターには、遠ざかりつつあるイナクトとアヘッド。
 くしゃみの噂は、どうやら最悪のものだったらしい。
 麻痺した思考が回復してくると、

 フェードアウトしていく赤い一機をオレンジの閃光が貫くのを視た。
 GNライフルによるビームの矢。
 アヘッド一機が同じオレンジ色の粒子を撒き散らし爆散する。
 「援軍…なのか?」
 カメラモニターが、ビームを放ったMSへと向けられる。

 !?

 「な…」
 乾いた唇から出たのは、自分の掠れきった声。
 「…な」
 モニターに映るは一機のMS。 機体全体がピンクのGN-Xに似たソレは、頭部だけが「異様」だった。
 「なんだよ、あれ」
 モニターに映るその頭部は、

「ガン…ダム…」

 GNドライヴを初めて搭載し、世界に混乱を招いた元凶。半年前に姿を消した、反政府組織の保有するMS『ガンダム』のそれだった。

スタンダール

研究所内で開発されたテスト機の一つ。フラッグをベースに建造された。
二基のGNドライヴが搭載されているようだが…

1829-5.jpg

Appendix

プロフィール

しゃけもなか

Author:しゃけもなか
FC2ブログへようこそ!

最新トラックバック

FC2カウンター

カレンダー

01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29

MicroAd

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

FC2チャット

FC2チャット

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード